『被相続人』 お亡くなりになられた方。
『遺言』 法律用語のうえでは『いごん』とも称します。
遺言は、臨終や各種の危難などに際しての特別な方式による以外は自筆遺言・公正証書遺言・秘
密遺言の3種類が法定されており、その方式については民法で詳細に規定されています。
そして、この遺言を確実に実行されることが望まれる場合、『遺言執行者』が専任される場合も
あります。
『証人』 遺言(普通遺言・特別遺言)に際して、以下に該当する立場の方は証人・立会人になることはでき
ません。
・未成年者
・相続人となるはずの者、遺贈を受ける者、これらの者の配偶者・親・子
・公証人の配偶者、四親等内の親族、書記・使用人
『遺贈』 遺言で財産を与えるものです。遺贈には「遺産の〇分の一」と示される『包括遺贈』と「〇〇の
土地家屋」と示される『特定遺贈』があります。
遺贈とよく似た性質の『死因贈与』は、贈与者の他界を原因として行われる贈与としての契約で
すが、実際には遺贈についての規定が広く適用されます。
『相続人』 相続人は当初『推定』されることから始まります。
通常、相続人として推定されるのは、
遺言で財産を与える先として指定された(『指定相続』と言います)者。
法定相続分を有する者。
遺留分を有する者。
ですが、これらについては被相続人の出生から他界に至るまでの戸籍や相続人本人の戸籍に記載
される事実のほか、遺言による場合は遺言の有効性も含めて確定されることになります。
*法定相続が規定する相続分を超過する、あるいは不足させる指定相続も有効ですが、遺留分を
侵害するに至る指定相続分は遺留分権利者による取戻し請求の対象になり得ます。
『法定相続』 法定相続はまず、その身分関係によって相続人となるべき立場を順位によって分けています。
【第一順位】 子供・孫などの直系卑属
【第二順位】 父母・祖父母などの直系尊属
【第三順位】 兄弟姉妹
そして、配偶者はこの順位には関係なく、常に相続人となります。
また、それぞれが相続人となる場合、各自の法定相続分は簡単に示すと以下のようになります。
【子と配偶者】 子が1/2、配偶者が1/2
【配偶者と直系尊属】 配偶者が2/3、直系尊属1/3
【配偶者と兄弟姉妹】 配偶者が3/4、兄弟姉妹が1/4
相続人である子・直系尊属の父母・兄弟姉妹がそれぞれ複数の場合には、各相続人均等に分け
る事になります。
『共同相続』 相続人が複数にわたる場合には、その遺産は分割の合意に至るまでの間、一旦これらの方々が共
同して有することとされ、この関係を『共有』と称します。そして、この共有される遺産も一旦
は各相続人がそれぞれの相続分に基づく割合での『持ち分』をもつこととなります。
また、この間の遺産についての管理を安定させるため、裁判所によって相続人のなかから遺産管
理人が選ばれることがあります。
*会社や家業などの事業承継を伴う相続については、これを円滑に行うための配慮から、
特例措置を用いる場合があります。
『特別受益』 被相続人の生前に、あるいは遺言によって、特定の相続人が被相続人から何らかの財産の贈与を
受けた場合、それが特別受益として遺産の総額見積もりにあらかじめ参入される場合があります。
特別受益の主な例としては、
遺贈内容
結婚・養子縁組の際の支度・持参金が相当額に及ぶ場合
生計をたてるための資本
(現金の贈与だけではなく、住宅などの不動産も対象になります)
これらが遺産の総額に組み込まれた場合、例えば兄弟A・Bが半分ずつ遺産を分け合うものとし
て、その総額を100とすると、A・Bいずれかがすでに50にあたる特別受益を得ていれば、その
者は相続開始時に現存する財産からは相続を受けられないことになります。
『相続欠格』
『相続廃除』 相続欠格は、民法第891条に規定される事項に触れる行為をした相続人の相続資格を剥奪するも
のです。また、相続人になると思われる者の行状に鑑み、被相続人が生前に家庭裁判所にこの者
を相続人から外すことを申し立て、結果これが受理されることで相続廃除が認められることにな
ります。
ただ、欠格も廃除も該当する本人に対してのみ行われるものであって、その者の子・孫による『
代襲相続』を妨げるものではありません。
もし、これらに該当する者が相続人として相続を受けた場合、他の相続人やその法定代理人(後
見人・親権者など)は、相続権の侵害を理由としてこの者が得た遺産の取戻しをすることができ
ます。
『相続回復請求権』と称されるこの権利は、相続侵害の事実を知ってから5年、または相続が始
まったときから20年を期限として行うことができます。
『代襲相続』 親Dさんがすでに他界しているAさんの祖父であるBさん(Bさんの配偶者Cさんは他界)がお
亡くなりになった場合、本来の相続人となるはずのDさんはBさんの遺産を相続することができ
ませんので、Dさんの相続分はAさんが受け継ぐことになります。
また、Dさんが存命であっても、Dさんが相続欠格や相続廃除に該当する場合には、同様にAさ
んへの代襲相続が生ずるものと考えられます。
『相続放棄』 何らかの理由によって、相続を放棄することは可能です。ただし、相続が始まる前には相続放棄
をすることはできず、また放棄をする際には家庭裁判所に申し出て、その受理の審判を受けなけ
ればなりません。
この相続放棄が認められた場合、先に述べた『相続欠格』『相続廃除』とは異なり、放棄をした
者の子・孫などの代襲相続の権利は生じません。
また、共同相続で限定承認をする場合、相続放棄者については相続の最初から相続人にはあたら
ないことになるため、その他の相続人全員の同意で限定承認を申し出ることができます。
『単純承認』 遺産の内容に関わらず、その全てを相続する方法です。限定承認や相続放棄とは異なり、裁判所
への申し立てなどの必要はありませんが、熟慮期間中に放棄や限定承認をしなかった場合は単純
承認をしたものとして取り扱われること、また、同じく熟慮期間中に遺産の一部や全部を『処分』
したり、遺産隠しをしてしまった際にも、そのような行為をした者(共同相続人のうちの一人、
あるいは数名)については単純承認がなされたものとみなされます。
ただ、この『処分』に該当する行為については民法に規定があり、例えば遺産に含まれるものに
ついて、法律が定める短期での賃貸借や、急激な資産価値の劣化が明白なものの換価などの『保
存行為』は処分行為にはあたらないとされます。
『限定承認』 相続人は遺産についての調査をする権利を有しています。そしてその調査のうえで、被相続人が
負担していた負債、あるいは遺言によって他者に贈与(遺贈)することになっていたものなどの
マイナスの財産が被相続人が有していたプラスの資産類を超過していた場合には、相続人全員の
同意によってプラス金額の限度内でしかマイナスの支払いにあてず、そのうえで残った負債につ
いては負担を負わない旨の選択をすることができます。
この方法に際しては、家庭裁判所への申し出とその受理をする審判を得る必要があります。また、
共同相続人のなかに既に単純承認とみなされる行為をしてしまった相続人がいる場合でも、限定
承認の申し出をすることができますが、このメリットはあくまで処分行為を行わなかった相続人
のみについて与えられるものであり、既に処分行為を行った相続人はマイナスへの支払いによっ
てもなお残っている負債について、自分の持ち分に応じた負担をしなければなりません。
『遺留分』 遺言が法定相続の規定以上の効力を持つ以上、相続人の廃除や相続欠格などの理由にもよらず、
身分上本来相続を受けるべき人に財産がゆきわたらない懸念が生じます。このような場合に、遺
留分は一定の立場の相続人に最小限保留されるべき相続分を規定されています。
各遺留分は以下のようになっています。
被相続人の父母・祖父母など、直系の親の代以上の者(直系尊属)のみが相続人である
場合は、被相続人の相続財産の1/3。
それ以外の場合、例えば子のみ・配偶者のみ・配偶者と子・配偶者と直系尊属などの
場合は被相続人の財産の1/2(相続人が一人のケースでも1/2、複数人のケースでも複数
人すべて合せて1/2です)。
遺留分権者が複数の場合、各自の遺留分は《遺留分x各相続人の法定相続分》の式によって計算
されます。
兄弟姉妹は法定相続人としては規定されていますが、遺留分についてはこれを持ちません。
加えて、相続放棄とは異なり、遺留分の放棄は相続開始前であっても、家庭裁判所の許可を得る
事で行うことができます。
『取戻し』 遺留分が侵害されるまでに及んでいる遺贈や生前の贈与契約、あるいは特定の相続人への過剰な
指定相続がなされている場合、遺留分についての権利を有している者はその財産の取戻しを、該
当する相手に対し請求する権利(遺留分減殺請求権)を有します。この請求については当初裁判
所に申し立てる必要はありません。ただし、自分が有する権利としての金額をあらかじめ明確に
しておく必要はあります。そのうえで金銭などのように単純に分けられない不動産や物について
は、取戻しの方法について相手方との何らかの調整が必要にもなります。
また遺留分減殺請求権の行使には期間制限があり、相続人が自分についての相続が始まったこと
を知り、自分が有する遺留分を侵害する遺贈や贈与がなされていることを知ってから1年、もし
くは相続開始から10年とされています。
喜多村 行政書士事務所
行政書士 喜多村 淳